研究課題/領域番号 |
22406012
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
美田 敏宏 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80318013)
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研究分担者 |
田辺 和裄 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (40047410)
塚原 高広 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90328378)
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キーワード | 熱帯熱マラリア / pfcrt / dhfr / dhps / Papua New Guinea / 薬剤耐性 / 集団遺伝 / 集団構造 |
研究概要 |
パプアニューギニアはマラリア薬剤耐性が独立に進化し、その耐性選択が急速という地域特性を示している。本研究では熱帯熱マラリア原虫の薬剤耐性ダイナミズムの解明を目指している。本年度の成果は以下の通りである。 (1)2011年度2月に東セピック州・ダグア地区13村落でおこなったマラリア疫学調査で得た1060例中138例の熱帯熱マラリア陽性血液検体から原虫DNAを抽出し、薬剤耐性遺伝子を分析した。その結果、クロロキン、ピリメサミンでは、昨年と同様に耐性が固定していた。dhps変異型は89%と昨年の56%、2002-3年の0%と比較すると急激に上昇していることが明らかになった。当地では10年前からクロロキン+ピリメサミン/サルファドキシンが第一選択となっている。急激なサルファドキシン耐性原虫の選択は耐性ダイナミズムを考える上で有用な知見である。 (2)2011年10月から2012年2月にかけてダグア地区11村落および3つの小学校、2つの島嶼、ダグア地区外2箇所の村落においてマラリア調査をおこない約1500検体の血液サンプルを得た。迅速診断キットでは5-20%のマラリア感染率であった。ダグア地区での調査では詳細な抗マラリア薬を含む薬剤使用歴を聴取しており、今後耐性進展に与える薬剤圧の影響を検討する。 (3)ウェワク病院における継続的な薬剤耐性遺伝子の疫学調査を本年度から開始した。救急部を含む外来マラリア患者は継続的に調査され薬剤耐性ダイナミズムの遺伝学的解析に必要な100例の検体が次年度中に収集される予定である。 (4)ダグア地区のマラリア原虫集団は、11座位の中立座位のマイクロサテライトマーカーを用いたベイズ解析により、数個からなる集団構造を持つことが明らかになった。この構造がどのように耐性原虫ダイナミズムに影響を与えていくのか、今後時系列データにより解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年間の現地調査により予定の9割程度(約2000人)に及ぶダグア村落住民から薬剤使用履歴を含む詳細な聞き取り調査および血液検体の収集をおこなうことができた。また遺伝学的解析は順調に進展しており、様々な知見が明らかになってきている。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね当初の計画通り進展しており、今後の推進方策に変更はない。しかし現地における治療政策変更(ACT開始)が2年程度遅れて導入されたため、アルテミシニンに関するダイナミズムの解析には、微細な遺伝子変異を抽出しうる手法を用いた強力な集団遺伝学的および数理生物学的な手法を用いた解析を用いる方向である。
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