研究概要 |
ロタウイルスは、地球規模で見ると年間50万人以上の5歳未満児の死亡原因になっている。世界でもっとも広く使われているワクチンは,血清型がGlP[8]である単価ワクチンである。このワクチンが、血清型が完全に異型であるG2P[4]ウイルス株に対しても有効であることは、本研究に先行する研究(2006~2009)によって示したが、同時に、地域の流行株がワクチンとは血清型の共通性が全くないG2P[4]株にシフトしていたことも見出した。一方、この単価ワクチンのマラウイにおける臨床試験での重症ロタウイルス下痢症の発生予防に対する有効性は49.5%と低いものであった。しかし、この臨床試験の期間中に流行していたロタウイルス株をみると、アフリカに特徴的なG8株が多数検出される一方で、ワクチン株と同型の野生株は13%に過ぎなかった。そこで、本研究では、この単価ロタウイルスワクチンとマラウイで流行している野生株との間の遺伝子レベルでの相同性を見るための第一歩として、代表的なウイルス株の分離培養を試みた。細胞培養で分離したウイルスのgenotypeは、G8P[4]が8株、G8P[6]が1株、G12P[6]がshort pattern viruses2株、long pattern2株、G9P[8]2株、G1P[8]が3株、G1P[6]、G12P[8]、G2P[4]の3つが1株ずつであった。ワクチンの臨床試験時のマラウイにおけるロタウイルス流行株を分離株として得たことにより、分子疫学レベルでの研究を行う基盤ができた。
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