研究課題/領域番号 |
22406014
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中込 とよ子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40155693)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ロタウイルス / ワクチン / 血清型 / 流行株 / G8 / アフリカ / マラウイ |
研究概要 |
本研究は単価ロタウイルスワクチンがマラウイでのロタウイルス下痢症および流行株変異に与える影響を検証することを最終目標としている。マラウイをはじめアフリカ諸国で特徴的に見られるG8ロタウイルス株の動向が特に問題となる。G8ロタウイルス株はアフリカ以外の地域ではきわめてまれである一方、ウシロタウイルスには普遍的に見られるので、種間伝播が強く疑われてきた。本研究では、最初に1997年から2007年までの10年間にわたり収集された299株のG8ロタウイルス株の分布を解析した。その結果、G8ロタウイルス株の検出頻度には大きな変動があり、最低は2005-2006年の5.2%であり、最高は2000-2001年の54%であった。また、G8ロタウイルス株はP[6],P[8]およびP[4]という3つの異なるP型と組み合わさり、それぞれの相対頻度は、59%, 10%および31%であった。この10年間の調査期間のうち、最初の5年間では、G8P[6]株が73%と大半を占め、これにG8P[4]株が27%と続いた。しかし、後半の5年間では状況が一変し、G8P[6]株は10%に激減する一方、G8P[4]およびG8P[8]がそれぞれ47%および43%を占めた。これらのG8株から各年代および異なるP型との組み合わせを反映するように代表的株を選び出し、細胞培養に馴化させ、最終的に27株の全ゲノム塩基配列決定を行った。この結果、その遺伝子構成は1株のゲノグループ間遺伝子分節交雑体を除き、G8-P[4]/P[8]/P[6]-I2-R2-C2-M2-A2-N2-T2-E2-H2であった。すなわち、ウイルス表層を構成しウイルス中和に関与するタンパク質をコードする遺伝子分節以外の内部および非構造タンパク質はヒトロタウイルスDS-1ゲノグループのそれと一致し、ウシロタウイルスの種間伝播の痕跡は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年11月にロタウイルスワクチンが定期接種に導入されたが、それまでにマラウイにおけるロタウイルス流行の分子疫学レベルでの基盤をおおむね構築することができた。とくに、マラウイをはじめアフリカ全般に特徴的であるG8株の変遷を10年間にわたり全ゲノムレベルで解析することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
マラウイでは予定通り、昨年11月からロタウイルスワクチンが定期接種に導入された。導入されたワクチンは血清型がG1P[8]である単価ワクチンである。このワクチンの導入が流行株に与える影響を全ゲノムレベルでの解析により追求し、Waゲノグループの単価ワクチンがDS-1ゲノグループの流行株の相対的優勢化に有利に働くという仮説を検証し、本研究を完成させたい。
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