研究概要 |
本研究は、単価ロタウイルスワクチンがマラウイでのロタウイルス下痢症および流行株変異に与える影響を検証することを最終目標としている。このために、マラウイで行われた単価ロタウイルスワクチンの有効性を検証するための臨床試験に際して、ワクチン接種者およびプラセーボ接種者から発症したロタウイルス下痢症に由来するウイルス株の解析を行ってきている。2007年から2008年にかけて行われた臨床試験のときに、それ以前の10年間でまったく見られなかったG12P[6]が全体の27% に達し、もっとも優勢なロタウイルス遺伝子型となった。このG12P[6]株の出現は次の二点からきわめて重要である。第一に、G12P[6]はG2P[4]と同様、ワクチン株の遺伝子型であるG1P[8]に対して、完全に異型であること。第二に、この前後から世界的にG12株の増加が報告されるようになり(G12株が優勢株となった世界で最初の報告は、我々が行ったネパールでの調査で明らかになった)、今や六大遺伝子型の一つになりつつあること、である。そこで、本研究では、緊急の課題として、突発出現したマラウイでのG12P[6]株のうち4株(MAL12, MAL39, MAL40 および MAL88)の全ゲノムレベルでの遺伝子解析を行い、その性状や起源を明らかにすることを目的とした。全ゲノム解析の結果、MAL12 と MAL40の遺伝子型が、G12-P[6]-I1-R1-C1-M1-A1-N1-T1-E1-H1であり、Wa-like genotype constellationであること、また、MAL39 と MAL88の遺伝子型が、G12-P[6]-I2-R2-C2-M1-A2-N2-T2-E2-H2であり、DS-1-like genotype constellationでありながら、VP3遺伝子をWa-like genotype constellationのウイルスから遺伝子再集合現象により獲得していることがことが明らかになった。マラウイでは、G12株が最近突発出現したにもかかわらず、なぜ、このような多様性をもっているのか明らかにすべく、さらに解析が必要である。
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