近年のヒトならびに水産家畜現場における抗菌剤使用の濫用は薬剤耐性菌の生態環境中における蔓延と薬剤耐性病原菌による感染症の増加をもたらした。これは感染症治療に対して選択可能な薬剤を大幅に制限することとなりこれへの対応は喫緊の課題となっている。そこで本研究では、耐性菌蔓延の実態とその機構を明らかにするべく、抗菌剤使用、環境中の薬剤耐性菌分布、さらには薬剤耐性感染症起因菌の拡がりとこのような高い健常人の耐性菌保菌率とがどのように関連しているかをタイ地方村落をモデル地域として調査解析し、その因果関係の解明を図った。 研究初年度では、先行研究で明らかとなったKanchanaburi地域の特定集落における健常人糞便中ESBL産生薬削耐性菌の検出を対象者数を拡大させ、薬剤耐性菌がどの程度持続して検出されるかを詳細に検討した。429名の当該地域住民より得られた糞便検体の解析の結果、72.4%の検体(1人1検体)よりESBL表現型が検出され、先行研究結果の確認ができた。また、検体収集地域で販売されている生肉からもESBL産生菌が検出され、その遺伝子型の詳細を解析中である。当該地域でのESBL産生菌の住民間の蔓延が確認され、食品からも同様の耐性菌が分離されており、今後の詳細な耐性遺伝子解析や参加住民からの聞き取り調査結果解析から、全体の機構解明へと進めて行く。一部成績は国際学会(ICAAC)ならびに査読科学雑誌(JMM)で発表した。
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