研究課題/領域番号 |
22406015
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研究機関 | 大阪府立公衆衛生研究所 |
研究代表者 |
山本 容正 大阪府立公衆衛生研究所, 所長 (20010100)
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研究分担者 |
平井 到 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00359994)
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キーワード | ESBL産生腸内細菌 / タイ / 健常人 |
研究概要 |
近年のヒトならびに水産家畜現場における抗菌剤使用の濫用は薬剤耐性菌の生態環境中における蔓延と薬剤耐性病原菌による感染症の増加をもたらした。これは感染症治療に対して選択可能な薬剤を大幅に制限することとなりこれへの対応は喫緊の課題となっている。そこで本研究では、耐性菌蔓延の実態とその機構を明らかにするべく、抗菌剤使用、環境中の薬剤耐性菌分布、さらには薬剤耐性感染症起因菌の拡がりとこのような高い健常人の耐性菌保菌率とがどのように関連しているかをタイ地方村落をモデル地域として調査解析し、その因果関係の解明を図った。 研究2年目となる平成23年度では、Kanchanaburi地域での調査研究に続き、山村となるNan地域の特定集落を対象とし、初年度に実施した如く健常住民糞便中薬剤耐性菌(ESBL産生菌)の検出、参加者居住環境、食品、自家飼育家畜の生態環境の調査を実施した。健常人住民412名から糞便検体を収集し、ESBL産生腸内細菌の保有率を検討した結果、247名(60%)の住民糞便検体から耐性菌が検出され、極めて高い保菌率が示された。前年度に実施したKanchanaburi地域での保菌率とほぼ同程度の高いレベルが確認されたことより、このような高いESBL保菌率は特定の地域に限定されたものでないことが明らかとなった。初年度に分離されたESBL産生菌の遺伝子型別や疫学情報の解析から、住民の抗生物質へのアクセスの容易さ(摂取頻度)が有意に保菌率と関連することが判明した。これら成績の一部は、国際学会(IUMS)、国内学会(日本細菌学会)ならびに査読科学雑誌(JAC)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、検体の収集とその解析が進んでおり、一部は学会発表ならびに査読科学雑誌での論文掲載となった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、得られた耐性株の詳細な検討(菌表現型別、遺伝子型別)を行い、地域における耐性菌の蔓延状況の解析を行う。加えて、さらなる関連地域の検体収集を試み、その広がりについても解析を行い、耐性菌蔓延の全体像のあぶり出しを行う。
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