研究概要 |
[背景] 家族性小児ステロイド抵抗性ネフローゼ(SRNS)は、有効な治療がなく腎不全に至る劣性遺伝の難病である。根治的治療には腎移植を要し、患者と家族の心身の負担は大きい。欧州ではすでに数個の原因遺伝子が同定されている。一方アジア人のSRNS疾患遺伝子は、欧米の症例とは異なっており、多くは不明である。 [目的] 家族性SRNSは少子化傾向により減少している。疾患遺伝子を明らかにするために、アジア諸国での国際協力体制を構築して、症例情報を集積する。 [成果] 3年計画の1年目である本年は、アジア諸国の連携研究者(飯島、Cheong, Hu)との人的ネットワークから得られた情報を整理し、病因解明のために必要な検体収集やデータベースの構築を行った。倫理面については、本学倫理委員会承認プロトコール(ヒ-0805号)に準拠し、十分な配慮を行った。 (1) 臨床情報と検体収集(塚口、飯島、Cheong, Hu)小児腎疾患国際研究(ISKDC, 1981)の診断基準に準じた診断、治療を行っている患者を対象に、アンケートや診療録調査を行った。 (2) 疾患遺伝子検索(塚口、飯島、Cheong, Hu)検体収集が終了した家族例16、孤発例10例について行った全ゲノム連鎖解析の結果を、Merlinのgene dropping simulationを用いて再検討した。統計学的に有意となる疾患遺伝子座は1カ所のみで、その他数カ所は連鎖が疑われるものの家系構造が小さく、症例も少ないため確定に至らなかった(論文作成中)。国立遺伝学研究所と共同で、次世代シークエンサーHighSeq 2000を用いた、全エクソーム解析を行う準備を進めている。 [期待される結果] 小児SRNS疾患遺伝子の情報が、成人の進行性腎不全の病態解明にも貢献する可能性がある。本研究成果を、難治性腎疾患を克服するための先端医療開発の基盤整備に役立てる。
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