研究概要 |
[背景] 小児期腎不全の原因疾患は、欧米の報告では先天性腎尿路奇形が約半数を占め、さらに残り約1割が糸球体疾患(巣状糸球体硬化症FGGS;ステロイド抵抗性ネフローゼSRNS)である(NAPRTCS, 2007, ItalKid 2002)。これに対し本邦の調査では、先天性腎尿路奇形が45%、FSGSが35%で、欧米と異なり糸球体疾患が多いのが特徴である(小児腎臓病学会 1998-2005) [目的] 小児慢性腎不全(CKD stage 4, 5)の原因で最も多いのは,世界各国共通して先天性腎尿路疾患であるが、アジアには糸球体硬化をしめすネフロン発達障害が多い可能性がある。本研究ではアジアの研究拠点が共同で主として家族性SRNS症例を収集して、疾患遺伝子を検索する。 [成果] 申請者らは、先行研究ですでに海外共同研究で劣性遺伝様式の15家系のサンプルを収集している(Kitamura 2006)。優性遺伝家系、弧発10例を共同で収集した。家系サンプルがそろった症例から、エクソーム解析を行った。 1) 遺伝学的解析:SureSelect Kit (50Mb)で全エクソームライブラリーを作成し、次世代シークエンサーHiseq2000を用いて、paired-end 75bp, depth x30-50, total 5-6 Gb の条件で変異を検索した。その結果、いくつかの疾患候補遺伝子に一塩基置換を検出した。 2) 候補遺伝子の意義付け:候補遺伝子のヒト腎での局在を、免疫組織染色法で検討した。発現実験を行い、変異体の細胞生物学、生化学的特性を検討した。 [意義・重要性] 3ヶ月以降5歳までに発症する難治性ネフローゼの原因は、欧米ではNPHS2が3-4割を占めている。ところがアジアではNPHS2変異はほとんどなく、アジア人に特異的な疾患因子を明らにし、治療薬開発や予防方策の充実化に貢献したい。
|