ベトナム社会主義共和国ベンチェ省に赴き、ベンチェ省の拠点病院であるグエンデンチュー病院の産科医とともに、2009年1月1日から同年12月31日までに同院で分娩した両親と子どもを対象とした先天異常児の調査を実施した。調査項目は、生年月日、出生時体重、週齢、病名、両親の年齢・喫煙・内服薬・先天異常・全身疾患の有無とした。生産児に先天異常が認められた場合は別紙の質問項目を記入するようアンケート調査を実施した。 生産児数は男性3521人、女性3335人、計6856人であった。このうち先天異常児は男性28人、女性27人、計55人であった。出生児に占める先天異常児の割合は0.80%であった。 最も多かったのは内反足9人、口唇口蓋裂(口唇裂含む)7人、多指および内反手6人、水頭症およびダウン症5人などの順であった。先天異常発生率は日本において約2%以下との報告が多いが、本調査においては約0.80%であり非常に低い発生率であった。これには、死産や新生児死亡が明らかではなく、重度の先天異常の場合は死亡扱いとなり、小児科への診断に至っていないためと考えられた。先天異常のなかでも最も多かった口唇・口蓋裂は日本と発生率に大きな差がないものの、水頭症や腹壁破裂は日本と比較し高頻度であると考えられた。さらに先天異常として無脳症が挙げられているが、現地の医療状況から考えると死産に近い状態ではないかと推察された。より詳細な先天異常データを得るためには、項目の確認やデータ収集の方法など、現地スタッフとのより細やかな連携が必要であると考えられた。これらの結果は第35回日本口蓋裂学会総会学術集会にて発表予定である。
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