昨年に引き続き現地の疾患モニタリング予防センターにおいて継続的に調査を行うことで、疾患のデータを把握するとともに、現地へ赴き、同国側研究者と昨年の調査内容につき検討し、調整を行った。 2011年にグエンデンチュー病院において出生した児を対象とした調査では、先天異常は7710例中27例(0.35%)であった。水頭症と唇顎口蓋裂が6例と最も多く、無脳症、臍帯ヘルニア、腹壁破裂が2例で続いた。 先天異常の発生頻度はヒトではおよそ3~5%と報告されているが、2011年の調査結果もこれと比較し明らかに低いものであった。昨年、産婦人科医、助産師に対する先天異常の病態、診査法のレクチャーを行ったが、まだ十分でない可能性も考えられた。助産師への聞き取り調査では、半数以上が口蓋裂を見た事が無く、外表奇形はある程度判断する事は出来ても、口腔内の診査は十分に行われていない可能性も示唆された。さらに、近年超音波による出生前診断が普及し、異常が発見された場合、出産を希望せず中絶を行うケースが増えてきた事も発生率減少の要因と考えられた。今後も引き続き医師、助産師に対して口蓋裂を含めた先天異常の病態、診査法のレクチャーを行い、スクリーニング精度を上げる事で、より信頼性の高いデータの収集を行っていきたいと考えている。また、出生前診断と人工妊娠中絶の関連を検討するために、これらの実態調査の可能性について関連部局と検討を重ね、2013年からの調査につき協力を依頼した。 絨毛癌に関しては、現地の医師、看護師に、発生予防のプログラムの継続を依頼するとともに、胞状奇胎患者の管理・登録業務および診断・治療に関する経過の調査を依頼した。また、必要に応じ実施のための説明会を行う準備がある事を伝えた。 さらに、現地の人民委員会をはじめ政府機関の行政担当者と面談し、同研究に対するさらなる支援を要請した。
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