口腔領域の粘膜疾患の多くにヒトパピローマウイルス(HPV)感染が関与している。特に、口腔領域の悪性腫瘍の中で最も発生頻度の高い扁平上皮癌には、HPVがその発生に重要な関与をしている。我々のこれまでの研究より、HPV感染は生活習慣に大きく依存し、また口腔衛生状態の改善により減少することが示唆されている。本調査では、ベトナムの地方都市で伝統的な生活環境を保っているベンチェ省メコンデルタ地域における、口腔領域のHPV感染の現状と口腔粘膜疾患の発生の現状を、遺伝子工学的および疫学的に調査・検索し、生活習慣・環境とHPV感染の関係を解明することを目的としている。 我々が毎年行っている医療援助に合わせ、平成24年12月に研究代表者 吉田和加、連携研究者 前田初彦、久保勝俊、研究協力者1名が、ベトナム・ベンチェ省のグエンディンチュー病院へ赴き、口唇口蓋裂患者の母子とその家族を対象に、インフォームド・コンセントを得た上で、口腔粘膜(頬粘膜)の擦過サンプルおよび血液、口腔粘膜疾患や生活習慣や口腔衛生状態に関するデータを収集した。(患者61名、家族78名、合計139名分) また、HPV感染を含め、口腔粘膜疾患の研究を行っているホーチミン医科薬科大学を訪問し、7名の研究者ならびにスタッフと研究の打合せ会議を行った。さらに、ハノイ医科大学を訪問し、5名の研究者と今後の研究も含め打合せ会議を行った。 現在、愛知学院大学歯学部口腔病理学講座にて、最新の文献等の情報をもとに、精度の高いHPV検出方法の再検討を行いながら成果報告書での報告に向け解析を進めている。
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