研究課題/領域番号 |
22406034
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
嶋崎 義浩 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (10291519)
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研究分担者 |
山下 喜久 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20192403)
江島 伸興 大分大学, 医学部, 教授 (20203630)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 歯学 / 国際比較 |
研究概要 |
日本人と韓国人は、モンゴロイド人種の中でも遺伝子的に極めて近縁な関係にある一方、生活習慣や医療保険制度を含む社会保障体制など両国間の背景要因には数多くの相違点があり、口腔健康状態にも二国間で差があることが示唆されている。そのため、本研究により日韓両国の口腔保健に関する疫学データを整備し、両国の医療保険制度や歯科保健対策、また住民や医療者側の口腔保健に対する意識など社会的な背景要因について調査分析することで、両国間の口腔保健状態の違いに影響を及ぼす要因を総合的に検証する。 両国の口腔健康状態を比較するためには、大規模集団の調査データを比較することが望ましい。そのため、日本では福岡県久山町の健康診断受診者を対象とし、韓国ではソウル市近郊のヤンピョン市で行われている地域住民に対する健康診断受診者を対象として、それぞれの健診結果から得られる口腔健康状態の比較を行うとともに、両国の対象者から採取した唾液試料をもとに口腔細菌構成の比較を行うことで、それぞれに特徴的な口腔細菌が存在する結果が得られている。また、日本の対象者における刺激唾液分泌量が口腔健康状態に深く関わっていることが明らかになっており、韓国との比較を行うことで唾液の分泌が口腔健康状態に及ぼす影響が共通しているのかを示していくことには意義があると思われる。また、日本の男性集団を対象とした調査結果から、正常範囲内の血清クレアチニン濃度が歯周病と関わっている結果が得られた。 今年度は、日本と韓国の歯科医療保険制度における予防に対する扱いの違いを、両国の有識者から情報を得るかたちのパネルディスカッションを行ったことで、両国の歯科保険の違いについて理解を深めることができたことは、両国のこれからの歯科保健・医療を見直すうえでの有意義であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度にヤンピョン市で行った地域住民への健康診査の際に採取した唾液試料および福岡県久山町の地域住民から得られた唾液試料の解析を行い、両国の国民に特有な口腔細菌に違いが見られる興味深い結果を得ることができた。また、日本の対象者における唾液分泌量と口腔健康状態との関連や、血清クレアチニン濃度と歯周病との関連についても報告することができた。大規模集団からの健康診断の情報だけではなく、唾液試料からの口腔細菌構成の情報を、日本だけではなく韓国の地域住民からも得ることができたことは、大変貴重かつ重要なことであり、それらのデータの解析から得られる研究成果は今後の両国の歯科界にとって重要かつ意義深いものになると考えられる。 また、両国の歯科医療保険制度の違いに対する理解を深めるためのパネルディスカッションを実施したことで、両国それぞれが抱えている歯科医療・保健の課題の共通点や相違点を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針としては、本年度に解析を行った両国の地域住民の唾液中口腔細菌構成の違いに関する分析をさらに進めることで、両国それぞれにおける口腔細菌構成と口腔健康状態との関連を調べるとともに、両国の地域住民の口腔健康状態の違いに口腔細菌構成の違いがどのように影響しているのかを明らかにするための研究を進めていく。口腔細菌構成の分析方法については、これまでに行ってきたT-RFLP法だけではなく、次世代シークエンサーを用いたパイロシークエンス法による解析を行うことで口腔細菌構成に関するより詳細な解析を予定しており、両国の地域住民の口腔細菌構成の違いに関する情報に関するより詳細な結果が得られるものと考えている。また、日本における刺激唾液分泌量の変化を口腔健康状態の関連を分析するとともに、韓国においても唾液分泌量が口腔健康状態に関連しているのかについて検討を行う。 両国の歯科保健・医療に関する情報を医療保険制度の予防に関するものだけではなくさらに検討課題を広げて情報収集し、両国の長所短所を比較検討することで、それぞれの国が目指すべき歯科保健・医療の方向性についての検討を行う。
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