研究概要 |
今年度は、大規模集団の調査データを用いて日本と韓国の口腔健康状態の比較を行い、住民健診の場で採取した唾液をTerminal restriction fragment length polymorphism法(T-RFLP法)で解析し細菌構成の比較を行った。 口腔健康状態の比較には、日本人のデータとして2012年福岡県久山町の健康診断受診者の歯科健診結果を用い、韓国は2012年韓国国民健康栄養調査データを用いた。40~79歳の者の現在歯数は両国で違いはなかったが、韓国に比較して久山町のほうが歯周炎有病率は高かった。これは、異なる年度の両国の国家統計を比較した際と同様の結果で、韓国人に比べ日本人は歯周病有病率が高い傾向にあるといえる。 歯周病有病率の差は口腔細菌叢の構成の違いに起因する可能性があるため、採取した唾液から16S rRNA遺伝子を用いてその細菌叢構成の比較を行った。唾液採取は久山町住民2,272名と京畿道楊平郡(韓国)の住民543名から行った。全被験者の検体をT-RFLP法を用いて解析するとその細菌構成が両集団で有意に異なっていることが示唆された。さらに歯周炎の症状が全く認められない者140名に限って、Barcoded pyrosequencing 法による詳細な解析を行った場合も両集団の細菌構成の比率には大きな違いが認められ、韓国人に比べて日本人の口腔マイクロバイオームではNeisseriaの割合が少なく、Prevotella、Veillonellaをはじめとする19菌属がより優勢であった。我々は以前の研究では歯周炎患者の唾液でPrevotella、Veillonellaがより高比率を占めていることを指摘している。これは、口腔常在マイクロバイオームの構成の違いが韓国人よりも日本人に歯周病の有病率が高い理由である可能性を示唆している。
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