研究課題
本研究の目的は、精神障害者の社会参加自己効力感とそれに影響を及ぼしうる関連因子について国際比較によりその傾向を明らかにし、わが国の精神障害者の社会参加促進に向け、今後の精神医療保健福祉における有用な示唆を提案することである。諸外国の精神保健医療福祉事情や国際比較先行研究の精査および現地医療関係者による専門知識の提供から地域文化・地域精神保健医療福祉制度・システム、精神障害者の現状を比較検討した。その結果、地域精神保健福祉が発達しており、わが国の精神科リハビリテーションに多大な影響を与えている米国と文化的な類似性の高い中国に絞って、わが国との国際比較を行う方針とした。質問紙は社会参加に対する自信と、先行研究から示唆された影響を与えうる概念(自尊感情、ソーシャルサポート、健康度等)で研究枠組みを構成した。米国版調査用紙の作成に際して、現地の精神保健医療サービス施設を視察した。現地のケアの特徴は「対象」が重視されていることであった。すなわち、問題が何であれ、対象の抱えている問題が取り組むべき課題であり、評価や目的は対象の満足度や問題が解決することであるという立場でサービスが行われていた。このような地域保健医療サービスの現状と現地研究協力者の見解をまじえて調査用紙の内容妥当性を検討し、一部修正した。調査票で用いる既存尺度(英語版)は、尺度作成者に全て許可を得ることができた。現在はバックトランスレーション実施し、今後、協力施設開拓とパイロットスタディを実施する見通しである。中国調査に向けても、中国人の精神医療分野の専門家2名の協力のもと、中国の保健医療制度やサービスの現状を鑑みて質問紙のフェイスシート等一部修正を行い、中国版質問紙の作成に向けてバックトランスレーションを実施中である。
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