研究概要 |
主として、シュタイナー環における「デカルトの円定理」の拡張の問題に取り組んだ。シュタイナー環とは、互いに外接または内接する複数の円からなる図形で、これには種々の関係式が成り立つことが、古典的な幾何の結果として知られている。特にn=3の場合に各半径の関係を表す公式は、「デカルトの円定理」(1643)と呼ばれ、有名である。 しかしながら、これをn=4以上(4個以上の円が環をなすような図形)に拡張した結果は、知られていないようであった。そこで本研究では、n=4,5,6と計算を進め、それぞれにおける関係式の導出を試みた。結果として、半径の間に成り立つ方程式は、それぞれ4次・24次・48次となることが確認でき、それぞれの性質も一定解明することができた。これにより、いわば「未知の公式の発見」ができたことが、本年度の成果といえる。 この問題に取り組んだきっかけは、江戸時代末期の和算家である法導寺善による「観術」(1861)がn=4の図形を具体的に解いていることにあった。西洋数学では、n=4以上の場合の公式は現在まで未知であったが、日本ではすでに解かれていたともみなせる。また、それ以前の安島直円「円内容累円術」(1791)では、一般の場合の漸化式の導出も示され、J.Steiner(1796-1863)が種々の関係式を示すより前に、和算家の研究の方が先んじていたと考えられ、今後の重要な研究テーマとなる。 これらの結果は、国際会議報告1件および国内研究会1件の報告として、発表をおこなった。
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