研究課題/領域番号 |
22500015
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
今井 勝喜 広島大学, 大学院・工学研究院, 助教 (20253106)
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キーワード | セルオートマトン / 保存性 / 可逆性 |
研究概要 |
本年度は、ナノスケールな系における粒子の相互作用による計算モデルのひとつであるブラウニアンセルオートマトンと保存的セルオートマトンの関係について規則設計の見地から研究した。保存的セルオートマトンのフロー関数の形式で計算万能なブラウニアンセルオートマトンを与え、フロー関数の形式を用いることがブラウニアンセルオートマトンを扱う上でも有効であることを示した。雑誌論文1に掲載している。しかし、また、フロー関数の形式によるモデル化は、規則的な格子上では有効に働くが、ランダムや準周期的といった不規則な格子上ではフロー関数によるモデル化が難しいこともわかってきた。そこでランダムなネットワークと準周期的なセルオートマトンについての性質をその上の保存的なパターンの移動に着目して調べた。学会発表3,4に掲載している。特に準周期的なセルの配置を持つセルオートマトンの場合には局所的にはきわめて強いセル配置の規則性を持っているため、その上で保存的な規則を設計する新しい手法が構成できるのではないかと考えている。 次に可逆的な性質を併せ持つ保存的セルオートマトンに関する研究を昨年度に引き続き行った。昨年度1次元3近傍で4状態以上の保存的セルオートマトンが可逆性も有する場合、新たな性質を持つ規則群が存在することが計算機シミュレーションによる全探索によりわかっているが、本年度は、その探索結果をもとに5状態より大きな状態数の場合の自明でない可逆かつ保存的なセルオートマトン規則を組織的に設計する新たな手法を構成した。本年度の学会発表1で一部報告後、現在可逆計算に関する国際会議RC2012に投稿中である。 セルオートマトンは汎用モデリングツールとして一般的に用いられているにもかかわらず、日本語で書かれた一般的な入門教科書がほとんどなかった。そこで、初等的なセルオートマトンの教科書を共同で訳出した(図書1)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
セル配置が不規則セルオートマトンにおける保存的な性質を調べる必要性から準周期的な配置のセルオートマトンを扱えるシミュレータを作成する必要が新たに出てきたためである。しかし、シミュレータを再設計しタブレット端末でも動作するものを作成中で、来年度は本研究に利用するだけでなく、より汎用なセルオートマトンシミュレータとして無償で配布することも目指している。
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今後の研究の推進方策 |
規則的な格子を用いたセルオートマトンの近傍の重なり方が保存的な粒子の移動を決めるフロー関数の引数の数を決めることがわかってきたので、逆に、引数の数を制限したフロー関数で記述できるクラスを特徴づけることを優先して研究する。しかし、周期的でない場合でも、とくに準周期的なセル配置の場合には保存的セルオートマトンの規則を設計する上で有効な方策がある可能性があるため、当初予定していなかった準周期な配置の場合についての研究を並行して行う。可逆的な制約が合わさっている場合は2近傍の場合にはその性質が明らかになっているので、3近傍の場合を集中的に調べる。
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