研究概要 |
文脈が互いに類似した非決定性並行プロセス間には,多くの場合,同一の計算・推論処理が多数共通に存在する。本研究は,それらを共通に処理することによってシステム性能を飛躍的に高めることを狙った「多重文脈型推論」の基盤を開発するという全体構想の中で,(1)並列計算機におけるスケーラブルな並列実装方式を開発してシステムのパワーを格段に高めること,及び(2)代数的ソフトウェアの仕様検証分野においてこれまで解けなかった帰納的定理証明等の応用課題に挑戦してその可用性を高めること,が目的である。平成22年度には,主としてシステムの計画・設計に係る下記研究を実施した。 (1)帰納的定理証明とその並列性に関する調査・検討 帰納的定理証明に関して,抽象性の高いアプローチも含めて調査・検討を行い,本研究が扱う上で適切な技術の抽出を検討した。特に,その技術を多重文脈型推論システムの並列実行に関連付けるため,タスク及びデータに関する並列性の観点から技術内容の吟味を行い,並列化に適する普遍性の高い技術の抽出を行った。 (2)スケーラブルな並列実行方式の検討 並列プログラミングの基礎となる並列計算モデルについて基本的な検討を行った。また,等式や書換え規則の生成・更新処理,停止性検証の処理,及びシステム終了条件の判定処理等を検討の対象として,スケーラブルな並列実行方式の基本設計を行った。 (3)並列プログラミング言語に関する動向調査 実装を行うに当たっての並列プログラミング言語に関する調査を行った。特に,関数型言語をベースとして並列計算を可能とするErlang及びClojureについて集中的に検討を行うとともに,キーワードプログラミングによる開発の検討も行い,本研究経費の設備備品費で購入した並列計算機により,予備的な実験等を実施した。
|