2011年度までに焦げたパンケーキグラフに対する耐クラスタ故障経路選択アルゴリズムが完成したため,2012年度においては,開発アルゴリズムの新しい位相への適用,および開発アルゴリズムの改良の2つの方向性を追求することとした.新しい位相への適用では,より複雑な完全階層型ハイパキューブおよび階層キューブ網を新たな位相としてとり上げ,研究を推進した.具体的には,これらの位相に対して,耐クラスタ故障経路選択アルゴリズムを開発するための前段階として,耐ノード故障経路選択アルゴリズムを開発した.すなわち,階層キューブ網に対しては,ノードからノード集合への互いに素な経路選択アルゴリズムの開発に成功した.一方,完全階層型ハイパキューブに対しては,より難しいノード集合間の互いに素な経路選択アルゴリズムの開発に成功した.また,本研究において開発した,耐クラスタ故障経路選択アルゴリズムより,さらに進んだアルゴリズムを開発するため,まず,耐ノード経路選択アルゴリズムに確率構造を導入することを試みた.具体的には,ハイパキューブとハイパスターグラフの2つの位相に対して,任意の目的ノードへの到達を保証しない場合でも,到達確率の期待値を推定し,その値に応じて経路選択を行う,新しいアルゴリズムを提案した.計算機実験の結果,いずれの位相においても,提案アルゴリズムが,従来アルゴリズムより,大幅に高い到達率を達成することを確認することができた.
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