研究概要 |
【研究内容】 平成23年度は,クロック信号線の遅延故障とゲート遷移故障が同時に存在する回路に対するテストパターン生成法を開発した.テスト法としては,スキャン設計を利用して,連続した2パターンを印加可能とする,ローンチオンキャプチャテストを仮定した,対象とするクロック信号線の遅延故障は,遅延量がそれほど大きいものではなく,スキャンシフト動作には影響せず,システム動作時のみ影響するようなものである.このような故障が存在した場合,スキャンシフト動作は常に正常時と同じ動作であり,システム動作時に,フリップフロップへの値の取り込みが遅れる.その結果ローンチオンキャプチャ動作時の2クロック目に誤った値が取り込まれる可能性がある.このようなクロック信号線の遅延故障とゲートの遷移故障が同時に存在する場合を考え,テストパターン生成法を開発した.開発した手法は,縮退故障(信号線の論理値が固定する故障)用テストパターン生成ツールを用いて実現する手法であり,対象故障の検出条件を縮退故障の検出条件に変換するよう,回路に付加ゲートを挿入し、テストパターンを生成した.ベンチマーク回路に対して実験を行った結果,すべての回路において,100%の故障検出効率を達成することができた. 【研究の意義,重要性】 従来のLSIのテストに関する研究では,組合せ回路部の信号線やゲートが対象とされており,クロック信号線を対象とした研究はほとんどなかった.近年のLSIではフリップフロップ数が増大しており,クロック信号線の故障の影響が問題となってきている.また,高速動作LSIにおいては,信号遅延が問題になる場合が多く,遷移故障を検出するテストの重要性が増している.そこで,本研究が対象とする,クロック信号線の遅延故障とゲートの遷移故障を同時に考慮したテストパターンを用いたテストを行うことで,遅延故障に対する高品質なテストが実現できる.その結果,高速LSIの信頼性が向上する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発したテスト生成法を用いることによって,クロック線上の遅延故障を検出することが可能である.遅延故障は2パターンテストが必要であり,他の故障モデルと比較して検出が困難な故障である.そのような故障に対するテストパターン生成法が開発できたことは,他の故障モデルに対しても同様の手法を用いてテストパターンを生成することが可能と考えられる.従って,当初の目的のクロック信号線上の故障に対するテストパターン生成の問題は解決されたと考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,クロック信号線上の故障に対する診断法を開発する.故障診断とは,故障が存在する回路において,故障位置を推定する技術である.故障診断法の開発においては,以下の課題を研究する. (1)故障診断に用いるテストパターンとしてどのようなパターンが有効かについて,縮退故障用パターンやランダムパターンなどの有効性を調べる. (2)故障診断においてフリップフロップの初期値をどのように扱うかについて,フリップフロップがリセット可能な場合とリセット不可能な場合に分けて考察する.
|