研究プロジェクトの最終年度として,シミュレータ基本部の改良・評価と通信状況の時系列表示機能の開発および通信状況をネットワークトポロジを3次元表示した図上にマップして表示する機能の改良を行った.研究代表者は,ノード間通信のフローに着目した新しい方式に基づいたネットワークシミュレータ(mfa)を提案した.mfaは,従来から行われていた通信パケットを追跡する方法と異なり,「システム内の全ノードについて2ノード間のメッセージのフローを算出し,システム全体を重ねあわせる」という方式に基づいており,大規模なネットワークを高速にシミュレーションできる.本方式の欠点である「通信のホップ数の小さいネットワークでは比較的精度の高い結果が得られるが,ホップ数の大きいトポロジでは,スイッチ内のアービトレーションの影響による誤差が大きくなる」を改善するために,スイッチのポートごとにアービトレーションを行う方法を考案しプロトタイプを実装した.今後評価を進める.また,「ネットワークシミュレーションの結果を,通信ネットワークのトポロジ上にマップして表示する機能」の改良を行った.MeshやTorusのネットワークを3次元表示し,通信パターンの進みに合わせて,ネットワーク内の個々のリンクの状態(通過メッセージ数や通信実効バンド幅)を表示する.これにより,映像から直感的に把握した通信の輻輳状況を数値で定量的に表示させることができるようになった.さらに,通信の輻輳状況をより容易に把握できるようにするために,複数の表示方法を組み合わせて表示する機能を改良した.上記のネットワークトポロジ上に通信状況をマップして表示する方法に加え各ノードの時系列の通信状況の表示,ノード間の通信関連図などを統合して表示・操作できるようなシステムのプロトタイプを作成した.
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