インターネット上で実現される開放型グリッドコンピューティングにおいて,他のコンピュータに依頼する処理内容の意味や目的を,依頼先に隠す「処理の隠蔽」と,正しく処理が行なわれたことを保証する「依頼先に対する信用性の確保」を実現する「セキュアプロセシング技術」の確立を目的としている.「セキュアプロセッシング技術」により,従来,非営利(non profitable)なGRIDとも呼ばれていた,開放型グリッドコンピューティングの商用利用が実現し,新たな応用を切り開く突破口となる.今年度,3つの課題について取り組んだ. 1つめは,前年度に引き続き,処理すべき本来のプログラムに対し,本来は必要のない実行命令(ダミーコード)を挿入することで,悪意を持った解析者の解析行為を困難にする手法の実装と,解析者の視点から,この手法の隠蔽強度評価を行った.成果は,International Conference on Advanced Computer Systems(2012-5,ポーランド)と情報処理学会マルチメディア、分散、協調とモバイルシンポジウム(2012-7,石川県)で報告した. 2つめは,依頼先ノードが正しく処理を行ったことを保証する多重処理における投票の信頼性について,悪意あるノードの共謀について定量的な検証を行った.この検証では,全ノード中の悪意あるノードの割合,また,悪意あるノードそれぞれの知己ノード数をパラメータとし,誤った結果がもたらされる確率を求めた.成果については,情報処理学会マルチメディア、分散、協調とモバイルシンポジウム(2013ー7,北海道)で報告する. 3つめは,これまでの成果を現実のプログラムに適用することを目指し,実プログラムを対象とした隠蔽手法の適用を自動的に行うプログラムの実装に取り組んだ.プログラムの実行時まで確定しない処理の取扱が課題として残っている.
|