研究概要 |
分散ハッシュ表では,あるキーに対する担当ノードを検索するためにオーバレイネットワークを用いる.オーバレイネットワークを構成するために多数のアルゴリズムが提案されており,アルゴリズムがオーバレイネットワークの性能に影響する.オーバレイネットワークのアルゴリズムを評価するためには,実際に通信を行う実験や仮想的に通信を行うシミュレーションによる方法などがある.実験による方法では,より現実に近い結果を得られると期待されるが,多数のノードからなるオーバレイネットワークを構成することは難しい.シミュレーションによる方法では,多数のノードからなるオーバレイネットワークを構成することは可能であるが,その結果が現実に近いことが重要である.本研究では,実験とシミュレーションにおいて同一コードでアルゴリズムを実装可能なOverlayWeaverを用い,PlanetLab上の実験によって得たデータとシミュレーションによって得たデータとを比較した.その結果,統計的に有意な差があることを確認し,第9回情報科学技術フォーラムにて発表した.データの差の原因として,マルチスレッドによる実時間シミュレーション方式であったことが考えられる.マルチスレッドを用いると,1つのCPUで複数ノードの処理をシミュレートできる.しかし,ノード数が多くなるにつれてCPUの負荷が高くなり,1つのCPUで1つのノードを処理する実験と比べて処理時間の差が大きくなる.そこで,単一スレッドによる離散イベントシミュレーション方式を採用し,実験とシミュレーションにおいて同一コードでアルゴリズムを実装可能なシミュレータを新たに開発した.
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