昨年度までの研究で,実験とシミュレーションにおいて同一コードでアルゴリズムを実装可能なOverlayWeaverを用い,PlanetLab上の実験によって得たデータとシミュレーションによって得たデータとを比較した.その結果,統計的に有意な差があることを確認し,第9回情報科学技術フォーラムにて発表した. データの差の原因として,マルチスレッドによる実時間シミュレーション方式であったことが考えられる.マルチスレッドを用いると,1つのCPUで複数ノードの処理をシミュレートできる.しかし,ノード数が多くなるにつれてCPUの負荷が高くなり,1つのCPUで1つのノードを処理する実験と比べて処理時間の差が大きくなる. そこで,本年度は単一スレッドによる離散イベントシミュレーション方式を採用し,実験とシミュレーションにおいて同一コードでアルゴリズムを実装可能なシミュレータを新たに開発した.OverlayWeaverと開発したシミュレータを用いた単一CPUによる多数ノードのシミュレーション結果と,PlanetLab上の多数CPUによる多数ノードのシミュレーション結果を比較する実験を行った.その結果,マルチスレッド方式より離散イベントシミュレーション方式の方が誤差が小さくなることを確認し,第75回全国大会にて発表した. これまでの研究で提案した一定次数のオーバレイネットワークにおけるルーティングアルゴリズムの性能を離散イベントシミュレーション方式によるシミュレータを用いて評価する実験を行った.その結果,ノードの参加と離脱の頻度が高い場合,従来手法の Chord と比べ,パケットの損失率が小さくなることを確認し,第22回ソフトウェア信頼性工学国際会議 ISSRE にて発表した.
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