本研究は、広帯域マルチチャンネルの環境で複数チャンネルのトラフィックを合成した場合を想定し、各チャンネルの安定性が異なるような環境も含め、マルチチャンネルの状態変化及び各チャンネルの状態に応じた適応型誤り制御方式を提案することを目的としている。本研究の初年度(平成22年度)では、IEEE802.11nに対応した、実験・検証用の無線ネットワークを構築し、高速ネットワーク環境において、TCPの性能の再確認および分析を行った。平成23年度では、チャンネルの状態変化を考慮して、チャンネル数を2本に限定して適応型誤り制御方式に関するシステムスループットの厳密解析を行った。平成24年度(本研究の最終年度)では、チャンネルの本数を一般化(n本、n>2)して、チャンネルの状態を考慮した2つの適応型制御方式を提案し、シミュレーションを用いて提案方式の性能評価を行った。本年度の主な研究実績は以下の通りである。 (1) チャンネルの状態変化確率モデルを用いて、チャンネルの状態変化の予測に応じた適応型誤り制御方式(方式1)を提案し、送受信の制御手順を確立した。 (2) 受信側からの、受信したデータに対する応答確認を利用した適応型誤り制御方式(方式2)を提案し、送受信の制御手順を確立した。 (2) 提案方式に対してコンピュータシミュレーションにより性能評価を行い、これまでの方式(チャンネルの状態を考慮していない方式)との比較を行った。数値例により、提案方式の有効性を明らかにした。提案方式1ではチャンネルの状態確率モデルを用いたため、一番優れた性能を示しているが、提案方式2では、応答確認情報のみを簡単に利用したにも関わらず、広範囲にわたって良好な特性が得られたことが確認された。
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