広域に低密度に分布する移動無線ノード間の通信技術としてDTN(耐遅延ネットワーク)技術を検討し、以下の成果を挙げた。 (1) 局所的移動計画広告に基づいたDTN無線マルチホップ通信: 各無線ノードの移動計画を隣接移動無線ノード間で局所的に交換することで中継ノードが配送案を策定し、これに基づいた次ホップ選択を行なう手法を検討してきた。ここでは、送信先無線ノードの移動計画を必ずしも入手可能ではないという問題がある。本年度は、無線ネットワークの構成要素に無線基地局を相互接続したインフラネットワークの存在を前提とし、送信先無線ノードの移動計画を入手していない中継無線ノードの次ホップ選択戦略として最も短時間で到達可能な無線基地局への配送案に基づいたデフォルトルート選択手法を考案し、この実現プロトコルの構築と有効性の検証を行ない良好な結果を得た。これにより、提案手法を用いた実システムの実現可能性を高めることができた。 (2) 被災者安否情報交換ネットワークの実現手法の検討: 多くの安否情報システムが取得情報を被災地域外へ通知することを目的としているのに対して、本研究では被災初期段階において被災者間で安否情報を交換するシステムへのDTN通信技術の適用を検討した。ここでは、避難所等に十分な通信機器等が存在することを仮定せず、被災者が自ら持ち寄った携帯端末を活用して、避難所毎の安否情報の格納と参照、緊急車輛搭載の車載端末を活用した避難所間の安否情報交換を実現するプロトタイプシステムを構築した。ここでは、携帯端末の記憶容量、電源容量に対する考慮、車載端末の記憶容量、移動計画等を考慮した実装を行なっている。 (3) 局所的情報交換によるDTN移動無線ネットワークの活用実験: 歩行者の快適な歩行支援システムを考案し、プロトタイプシステムを構築した。
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