情報検索技術は、主にインターネットにおける文書検索を中心に発展してきており、その多くは過去に作成された情報の検索であった。検索システムのほとんどは集中システムによって構築され、大規模なサーバ群を要する高価なシステムを構築する必要があった。しかし、これらのシステムにおいても、リアルタイムに更新されるような情報の検索は苦手としている。 本研究は、携帯端末等によってリアルタイムに提供されるセンサー情報や動画情報をタイムリーに検索し、利用できるようにするための情報検索技術を提案する。本研究の特徴は、モバイルノードを対象とした分散ハッシュテーブル(DHT)という検索技術を提案し、この問題点を解決することである。モバイルノードが参加脱退をすることで生じていた検索失敗率を、階層化DHT技術を実現することで解決するものである。 今年度は、DHTを構成する論理的なネットワーク上のどの位置に参加するかを決定するアルゴリズムを構築し、その有効性をシミュレーションによって評価した。提案するアルゴリズムは、既に論理ネットワークに参加している端末と新たに参加する端末との通信遅延を測定し、既参加ノードと最も物理的に近接する位置に新しいノードを位置づけるもので、検索遅延時間を10%~15%程度改善した。遅延時間を計測する際に、既参加ノードが保持する経路情報を用いることで、測定コストも削減できた。この内容は国際会議で発表している。また、アルゴリズムをモバイル端末上に実装し、通信遅延の性能を評価した。
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