研究概要 |
本研究では,多様な情報源に対応するセンサネットワークに関して,3つの主要テーマについて研究を進めている.第1テーマでは,センサネットワークを災害時の被害情報収集に活用することを想定し,センサネットワークのリアルタイム性と長期稼働のための省電力化を考慮した通信プロトコルについて検討を進めている.実際の地震加速度を記録したデータを解析し,加速度の計測に適したサンプリングレートについてまとめ,H23年9月に開催された構造物ヘルスモニタリングに関する国際会議で論文を発表した.また,建造物の地震加速度を広域にモニタリングするため,ネットワークのスケーラビリティを考慮したネットワークアーキテクチャを検討し,無線LANのアクセスポイントを第2層で接続してカバーエリアを拡張するWDS技術について基礎実験を行った.第2テーマでは,マルチポップ通信を行うセンサネットワークの送信レートの高速化のため,複数の周波数帯域の利用状況を考慮した通信方式を検討し,周波数帯域ごとに宛先までの遅延時間を求め,遅延時間の小さい周波数帯を優先する通信を提案した.シミュレーション評価の結果,IEEE 802.11a単独に比べて,スループットが最大約1.6倍,IEEE 802.11b単独に比べて最大約4.7倍向上することを示した.第3テーマでは,異なるセンサがもつ異なる種類の情報に関して,これらの情報を収集するネットワークトポロジの構築のため,"cycle-rooted tree"(CRT)による情報通信のグラフ理論的考察を行っている.CRTはすべての入次数が1である有向グラフで,サイクル構造と木構造の2つの性質を有している.正則有向グラフにはCRT構造によって容易に分解できるため,ネットワークトポロジが動的に変化するセンサネットワークに適していると考える.今後はCRTの構築アルゴリズムや情報散布の理論的考察を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リアルタイム性と長期稼働を多様な情報源に対応するセンサネットワークで実現するため,地震加速度を記録するためのテストベッドの開発を進めている.また,複数の周波数帯域を利用した通信方式の提案を行った.多様な情報源から情報を収集するためのネットワークトポロジの構築のため,cycle-rooted-treeに基づくグラフ理論的考察を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
多様な情報源に対応するセンサネットワークの開発において,建造物に加わる加速度をモニタリングするセンサネットワークの制御プロトコルの開発及び評価実験のためのテストベッドの開発を進める.このセンサネットワークで要求される通信特性に対応するため,通信環境適応型センサネットワークの開発を進める.グラフ理論をベースにした多様な情報源による連携モニタリング技術に関して,"cycle-rooted tree"(CRT)による情報通信のグラフ理論的考察を進める.
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