本研究で言う異種複合構造とは、全体としてある大局的構造を構成する要素が、大局的構造とは異なる局所的構造を備えるような複合構造を意味する。そのような複合構造の例として企業の構造を挙げることができる。たとえば、企業は組織としての構造を持つとともに、組織の構成要素であるプロジェクトや個人の活動も状態遷移のような何らかの別の構造を備えている。大規模構造を対象とした情報可視化の研究はこれまでも行われているが、大局的構造を構成する要素そのものの構造までは配慮されていない。本研究はそのような要素の構造を無視することなく、大規模な大局的構造とそれを構成する要素群を同時に俯瞰できることを目指す。構成要素群を構造的な観点で俯瞰可能にすることで、情報活用における高次知識発見の可能性を拓くことが期待できる。今年度は、本課題に対してこれまで先行して進めてきた、階層型アンカーマップの描画技術および組織活動の俯瞰手法について成果発表を行なった。階層型アンカーマップの描画技術は、二つの集合間の対応関係(2部グラフ)の描画手法として開発されたアンカーマップを拡張し、片方の集合内の階層構造も表現できるようにした描画手法である。組織活動の俯瞰手法は、組織におけるプロジェクトのような個々の活動を一つの線分で表現し、数千プロジェクトを同時に俯瞰できるようにしたものである。今年度の新規開発物としてはプロトタイプ第1版を開発した。第1版はプロジェクト管理データ(バグ管理データ)を可視化対象とし、複合構造の具体的なデータ構造としては、大局的構造は木構造、局所的構造は線形の状態遷移に絞った。大局的構造に関しては、Treemapをベースにした表現スタイルを採用し、局所構造にはガントチャートを単純化した表現スタイルを採用した。具体的なバグ管理データを用いて、視覚的表現のレビューを行なっている。
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