e-commerceにおける携帯端末の影響に関する既存研究は、全て概念モデルに立脚しており、数理モデル化に基づく研究は、皆無と言っても過言ではない。この研究上の空洞を埋めるべく、インターネット利用者の携帯端末によるブラウジング行動をモデル化し、その解析を通して携帯端末がe-commerceに与える影響を定量的に把握することを可能にする方法論を稽立した。具体的には、以下の三つの数理モデルを開発した。 モデルI:インターネットのアクセス機会ごとに特定の製品に関する情報を収集し、その都度、購買するか否かをある確率によって決定するタイプの消費者行動 モデルII:インターネットへの繰り返しアクセスを通して特定の製品に関する情報を収集し、情報量がある閾値に達した時に購買するか否かを決定するタイプの消費者行動 モデルIII:インターネットへの繰り返しアクセスを通して複数の製品に関する情報を収集し、最終的に一つの製品を選ぶタイプの消費者行動 各モデルによる個別的な消費者行動の集合体としてe-commerceが実現され、時間Tまでに購入される製品の数、或いは、K個の製品を売り上げるまでに掛かる時間、といった評価指標を計算するアルゴリズムを開発、携帯端末の関与の有無がそうした指標にどのような影響を与えるかを定量的に把握することを可能にした。
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