研究概要 |
(1) 2011年度報告(2)のモデルにより知覚される弾性の大きさの定量的予測を行った.実験では,仮想ばねを押す途中で遅延の大きさが一度だけ不連続に変化し,被験者は遅延変化後の弾性の大きさを判断する.実験の結果,モデルの予測通り,遅延変更後の弾性は変更前の遅延の大きさ(すなわち変更前の弾性の大きさ)に依存し,弾性は反力の時間積分として知覚されることが確認された.重さの知覚に関しても同様の実験を行い,同じモデルで知覚を予測できることが分かった.ただし,遅延の変化の幅が大きい時にはモデルの予測と測定値の間に差があることが分かった. (2) マスター・スレーブ制御における通信遅延の影響を知覚の観点から検討した.実験システムでは,マスターおよびスレーブアクチュエータは位置のずれに比例した力で引き合う.遅延により引き合う力が大きくなり,遅延が大きい場合には振動が生じる.このよう なシステムにおいて,前項と同様の方法で反力の知覚に関して実験を行った.その結果,定性的にはモデルの予測に従うが,被験者の知覚は遅延の変化前の影響がモデルの予測より大きく,モデルのパラメタの調整では測定値との乖離を埋められないことが分かった. (3) (1)(3)で挙げたモデルの問題に関して,(i)遅延の変化量が大きい場合の計算方法,(ii)知覚判断に使用される情報が運動の最後までではない,(iii)振動の影響の可能性を検討している.これらのうち(ii)単独では(2)の問題を解決できないことが判明している.(i), (iii)に関しては計算法を考案し,現在計算中である. (4) (2)のシステムにおいて,遅延の大きさに応じて,ユーザの知覚が一定に保てるような適応制御法を実装している.遅延の変動をフィルタリングして出力を制御することにより,ジッタやパケット損失にも対応できることを確認した.
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