前年度までに見出された問題点に対して、以下二点の改善を行った。 (1)指輪型装置の製作法の変更。これまで基材として 3mm 厚のアクリル樹脂を用い、利用者の人差し指の径を内径とする円状のパーツを複数切り出し、それらを積層することで指輪部を作成していた。それに対し、今回は板状のパーツを切り出し、それを加熱による折り曲げ加工により利用者の指のサイズに対応させた。(2)腕時計型装置への機能分離。入出力の機能および電源を指輪型装置に組み込むことが困難であることが判明したため、接触センサーによる入力以外の機能を、別途作成した腕時計型装置へと分離した。具体的には、出力機能(小型 LCD へのテキスト出力、LED 点灯・点滅、圧電ブザーによる発音および振動)、外界との通信機能(XBee モジュール)、電源をもたせた。また指輪型装置と時計型装置との間は電源および I2C 通信のための 4 線で接続した。 常時装着性を大きく損なうことなく装置を分離し、出力機能を付加したことにより、指輪型装置だけでは不足したフィードバックが増強され、適用可能なアプリケーションも増えた。たとえばメール到着の通知に対して、メールの題名のみを示すことで、メールを読むための機器を取り出すことなく即時的にアクションを指定することも可能である。 しかし、装置製作に関して、大半が手作業によるものであったため複数の利用者のための装置の用意が期間内に間に合わず、研究代表者のみの使用に留まっている。現在も装置作成を継続しており、完了次第データ収集を実施し成果を報告する予定である。また、当初の計画にはないが寸法の違いを上流工程で吸収するために 3D プリンタによる装置製作も計画している。
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