研究概要 |
研究全体の目的は,公的学術社会調査などから得られるエゴセントリック情報より,プライバシー等の問題から完全には把握できないソーシャルネットワークの全体構造をできるだけ精緻に推定する方法を開発することである.これに関して今期は以下の成果を得た. 1.本研究におけるネットワーク構造の推定は,困難な最適化問題であるが,それに対して効率よく近似解を求めるための手法として,平成22年度に引き続いて遅延評価付き貧欲法に注目し,手法の確立に向けて研究を行った.「ノード集合に対する媒介中心性の提案」「道路網における看板配置問題のモデル化と効率的解法」において,遅延評価付き貧欲法の最適化問題への適用について探求し,計算機実験によってその効果を確認した.これにより,効率の良い全体ネットワーク構造推定法の構築のための技術を確立した. 2.全体ネットワークの本質的構造を推定できているか検証するための評価法の確立に向け,定量的な評価指標の1つとして「ノード集合に対する媒介中心性の提案」にて集合媒介中心性のアイディアを提示した.さらに,ネットワークに対して効率的に集合媒介中心性を求めるアルゴリズムを考案した.計算機実験によって大きなネットワークに対して効率よく集合媒介中心性を求めることができることを示した. 3.ネットワークやデータの効率的な解析をすることを目的として,「編集距離に基づくアノテーション付き可視化法の提案」において,属性データの新可視化法の提案を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究において,当初の予定通り,ネットワークの構造推定の問題の定式化,最適化問題を解くコア技術の確立,推定結果法の評価法の確立,推定結果の可視化法の構築等を行った.以上,研究はおおむね計画通りに進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において,ネットワークの構造推定問題を解くための核技術および周辺技術の構築を完了した.今後の推進方策として,エゴセントリック情報からの精度良いネットワーク構造推定の手法の探求および計算機実験に入る.構造推定に用いるエゴセントリック情報として,これまではネットワークの各ノードの次数およびクラスタ係数が使用できるとの仮定に基づいて予備実験を行ったが,それだけでは精度良い構造推定が困難であると判明している.Assortative mixing等ががエゴセントリック情報として使用可能であるとの仮定のもとに(社会調査からは,assortative mixingは実際に入手可能な情報である),精度良い構造推定手法の確立およびその実証実験を行う.
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