研究概要 |
本研究の目的は, 公的学術社会調査などから得られるエゴセントリック情報から, プライバシー等の問題から完全には把握できないソーシャルネットワークの全体構造をできるだけ精緻に推定する方法を開発することである. これに関して今年度は以下の成果を得た. (1) 本研究で扱うネットワーク構造の推定問題は,NP困難な組合せ最適化問題であり,厳密解を求めるのは困難である.この問題に対して高速に近似解を求めるための手法として,平成23年度に引き続き.問題のサブモジュラ性に注目した近似解法として遅延評価付き貪欲法について探求した. (2) 全体ネットワークの推定法が本質的構造を推定できているかの評価の尺度として,ネットワーク上の乱歩モデルに基づき行動するユーザを想定し, 設置された複数施設のどれかにユーザが到達する確率を最大化する施設配置する問題を提案した.このような施設集合は,ネットワークの重要ノード集合として,ネットワークの一つの特性を表していると考えられ,真のネットワークと推定ネットワークでの施設集合を比較することによって,推定法の性能を評価する尺度とすることができる. (3) 推定法の評価尺度として有力なネットワークの特性量として,コリンク構造,隣接数分布,入出隣接数相関,多重度平均,ジニ係数を用いることを提案した. TwitterのFavorite, Follow, Mentionなどの関係から得られるネットワークについてこれらの特性量を用いて分析を行い,ネットワークの性質を把握するために有効であることを示した.
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