研究課題/領域番号 |
22500139
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
森住 哲也 神奈川大学, 工学部, 非常勤講師 (70537422)
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研究分担者 |
木下 宏揚 神奈川大学, 工学部, 教授 (70202041)
能登 正人 神奈川大学, 工学部, 准教授 (70299741)
鈴木 一弘 高知大学, 教育研究部・自然科学系, 助教 (50514410)
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キーワード | 知的エージェント / 情報流制御 / マルチエージェント / 複雑系 / 言語ゲーム / 定理証明 |
研究概要 |
1.H23年度の研究目標 H23年度は「課題2:マルチエージェントが複雑系として情報流制御するための制約とは何か,そのマクロな概念的枠組みを研究する」,を集中的に研究した. 2.H23年度の研究成果 (1)H22年度に提案したマクロな概念的枠組み「公私の価値循環」は,H23年度において「多元言語ゲーム」のアイデアに結実した.多元言語ゲームはウィトゲンシュタインの一元的言語ゲームを批判する哲学であり研究例は殆ど見当たらない.しかし,多元言語ゲームは群知能のビジョンとして重要な位置付けにあると考えられる. 本研究におけるポイントは,アクセス行列の中における振舞いが多元言語ゲームの構造を持つという可能性を見出したことである.複数の人々が関与する「振舞い」自体を群れの構成員とする意義は,情報セキュリティに柔軟性をもたらす可能性にある.今年度は,振舞いのparticleをオブジェクト指向言語によって設計する枠組みを提案した. (2)Multi-AgentSimulator"MASON"によってメタヒューリスティクスのパラメータを求める方法に関して,Agentの集合的類似によって,群れとして集まる仕組みを提案した. (3)群れに目標評価関数がある場合,Particle Swarm Optimizationを適用し,エージェントの多様な価値観を反映させるモデルを提案した, (4)推論で生じるcovert channelの問題をハイパーグラフで表現し,covert channel分析するモデルを提案した. 3.意義、重要性 クラウドのビジョンを多元言語ゲームと見做し,群知能の概念でシステム設計すれば,情報セキュリティの概念を根底から変革するシステムを提案することが可能になる。それは振舞いを護る情報セキュリティであり,連携という振舞いのビジネスがやりやすくなる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
情報漏洩・情報改竄を分析・制御するマルチエージェントシステムにおいて個々のエージェントを制御する意味論の多様性を認めたい.しかし全体をとりまとめる意味論は拒否したい.なぜなら一元的な制御規則は,社会を支配するイデオロギーに結びつく必要条件になるからである.つまり個々のエージェントが「イワシの群れ」のように自律分散的に調和して振舞い,しかしながら,同時に,個人個人の想いはしっかりした意味論として保証される,そのように公私がバランスするシステムを実現したい.そのビジョンとして「多元言語ゲーム」の可能性が成果として得られたことは,大きな成果であった.
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は,H23年度の課題2を深掘りし,システムの概念設計を完成させる.H24年度後半には可能な限り,個々のエージェントの意味論に関する課題1にチャレンジする. [ビジョンA]ファイル一つ一つを護るのではなく,「振舞い」を護ることが,新しい情報セキュリティである. 1.「振舞い」はアクセス行列を要素とする「読み書きの連鎖」として記述される.振舞いは「群れ」を作る.振舞いの群れが集まる引力とは何かを解明する. (1)振舞いのグラフ構造の位相の類似は引力である.位相幾何学による類似の記述を試みる. (2)群れの中に含まれる要素の集合論的類似は引力である。Tanimoto係数による類似の記述はH22年度成果である。 (3)公共,私,ゲーム,心的価値,の順序づけの類似は引力である.意思決定プロセス分析による類似の記述を試みる. (4)(1)(2)(3)を総合的に数値化し,群れる引力,家族的類似の枠組みを研究する. 2.評価関数が決められている場合,PSO等群知能のメタヒューリスティクスの適用可能性を研究する. 3.ビジョンAを睨み,covert channel分析手法を研究する.グラフ理論,ゲーム理論の適用可能性を研究する. 4.ビジョンAにおける「多元言語ゲーム」の哲学的な妥当性を探究する.
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