研究課題/領域番号 |
22500139
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
森住 哲也 神奈川大学, 工学部, 非常勤講師 (70537422)
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研究分担者 |
鈴木 一弘 高知大学, 自然科学系, 助教 (50514410)
木下 宏揚 神奈川大学, 工学部, 教授 (70202041)
能登 正人 神奈川大学, 工学部, 准教授 (70299741)
宮田 純子 神奈川大学, 工学部, 助手 (90633909)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 群知能 / マルチエージェント / 論理システム / 自己組織化 / 情報セキュリティ / 言語ゲーム / 論理学 / アクセス制御 |
研究概要 |
H24年度の目標: 昨年度到達したビジョン:「個々のエンティティを護るのではなく,振舞い自体を護ること」の哲学的意味を突き詰めシステム化する. H24年度の成果: [A] 3つのシステム的,哲学的オリジナリティ : ①〈私〉の独我的意味論ではプラトニズムから解放されない.或いは現象学的な表象では他者との相互作用を語ることはできない.しかし言語で示されることで社会は動いている.だから〈私〉と社会を循環させる観察方法と仕組みが必要である.②対象は〈私〉の振舞いである.振舞いの中に他者が紛れ込む.群れには局所相対的な家族的類似(集合的類似,位相幾何学的類似,意味論的類似)による相互作用が働く.類似性は射の連続性と随伴性として構造化される.③全体を制御する群知能は,振舞いが変動的に調和するための必要条件である.群知能はゲーム理論的志向性と価値の志向性を持つ.[B] マルチエージェントシミュレータ「Mason」を使用して群れを単純モデル化し,群知能パラメータを交換するメタヒューリスティクスで制御可能であることを示した.[C] 群れに目標評価関数がある場合,即ち複数の群れが多様な評価関数を持つことを前提とした上で,解が効率的に収束するParticle Swarm Optimizationの条件を研究した.[D] クラウドのファイルを群れと見做し,群知能の仕組みをアンドロイド・タブレットに実装した.[E] アクセス制御行列の上のファイルの読み書きの連続の振舞いによるcovert channelを推移閉包問題とし,covert channel 高速検出アルゴリズムを提案した. H24年度の成果の重要性: 研究3年目はシステムの哲学的理念の手がかりを得た年であった.また,アンドロイド,MasonのJavaシステムは,「群れる仕組み」の実用化研究のプラットフォームとして使用可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究当初は,〈私〉の観察視点:「多様な個々のセキュリティ・ポリシーを総合する仕組み」,及び公共(群れ)の観察視点:「個々のエージェントがシステムとして自律分散的に制御される仕組み」の間の相互作用によって情報漏えい・情報改ざんを制御する問題を研究する上で,個々の意味論から群れを成す全体システムの構造を作り上げてゆく方法を採ろうとしていた.しかし3年間の研究の結果,論理学から少し距離を置いて「リゾーム的言語ゲーム」という「全体」,即ち「群れの仕組み」から研究しなければならないことが明らかになった.そしてその考察課程における最大の成果は,プラトニズム的発想,即ち意味論の集合体によって社会システムを設計するのではなく,言語ゲーム的発想から始めて,それを工学的な「群知能」として具現化することこそ当初の目的に近づくことである,というほのかな確信が見えてきたことである.なぜなら,「〈私〉と公共の循環的調和による情報セキュリティ」というテーマは,「循環」という言葉に象徴されるように,プラトニズムから解放される以外成果にたどり着けないからである.もちろん群れの構成において最終的には「個々の意味論」として「直観主義論理」が使用されるであろうことは疑いがない.しかしながら直観主義論理に代表される論理学自体をアプリオリな前提として設計してはならないのである.むしろ「日常的規則は論理学に先立つ」ことを重視した設計が成されねばならない.言い換えれば,論理学は工学の中核として理論として在るが,アプリオリにあるのではなく,むしろ「論理学の周辺の命題群を如何に構造化し,社会システムとして有用な道具とするための相互作用の哲学」が必要なのである.その哲学をシステムの理念とすれば,後は工学的な設計法とplan, Do, Check, Actionのサイクルによる道具の「使用法」が残されるのみであろう.
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は過去3年の成果を踏まえ,群知能の家族的類似という基本原理を想定し,群れの戦略に対する外的変動,内的変動に柔軟に対応する適応的局所相対的作戦術の正常処理系(α-1)と,免疫のアナロジーに基づいて障害を排除し進化的に目的を達成する作戦術の異常処理系(α-2)を持つ群知能を研究する.以下主な課題である. (1) 適応的局所相対的な作戦術の正常処理系アルゴリズム(α-1)を,群ロボットの実装実験によって実証実験する.(2) 障害を排除し進化的に目的を達成する異常処理系アルゴリズム(α-2)を,免疫状態がタブレットから見える群ロボット制御支援システムとして実装する.(3) Mason (Multi-Agent Simulator) により,群れるために必要な相互作用バラメータの予測シミュレーションを可能とする仕組みを確立する.(4) 連続位相空間としての群れの相互作用を,位相幾何学的な連続性,および圏論的な相互作用の随伴性,そして家族的類似概念によって定式化する試み.(5) 論理学と家族的類似概念を使用して,個々に異なる意味論を持つ群れが適度な距離で集まる仕組みを哲学的に考察する.
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