研究概要 |
本研究では動画像の解析のため,大きな動きに対応でき,かつ,移動物体の各部の詳細な動きが分かるようなトラッキング手法の確立,および,これを実時間で実行するハードウェアの実現を目指している.23年度は,ブロック間の排他的割当において,RGBなどの可視特徴だけでなく,形状の恒常性や連続性などの形状特徴を考慮することにより頑健なトラッキングが実現可能であることを明らかにした.また,これを高速に実行するため,通信のボトルネックやメモリアクセスの競合を避けることが可能なハードウェア・アークテクチャを考案した. 1.RGB制約と形状制約に基づく最適ブロック対応 (1)可視特徴制約と形状制約の両方を満たすブロック間の最適対応を求めることにより,激しい日照変動や手振のもとでも頑健なトラッキングが実現できることを示した.2つの制約を同時に満たす解を求める問題はNP-hardであるため,GAを用いて近似解を求めた.(論文1) (2)形状の制約としてブロック間の相対距離の変化量の上限を定めたり,形状の連続性を扱うため,線形計画問題に置き換え,厳密な形状条件の下での解を求める方法を提案し,連続条件が形状の恒常性に大きな影響を与えていることを明らかにした.(学会発表1) 2.高速処理ハードウェアの実現方法 (1)SIMD型の並列処理ハードウェアでは,隣接モジュールとの通信に多くの配線資源が必要になる.本研究では,この資源を少量に留め,かつ,メモリアクセスの競合を避ける"同期シフトデータ伝送"を提案した.演算器の性能とデータ量から導かれる条件を満たせば,モジュール間を直接接続する場合に比べて性能は低下しない. (2)1次割当問題のSaving-Regret近似と同期シフトデータ伝送に基づくトラッキングハードウェアをFPGA上に実現し,100frame/sec近い速度が得られることを確認した.(学会発表2)
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今後の研究の推進方策 |
23年度までの研究により,移動物体の頑健なトラッキングには(1)RGB値のような"可視情報に基づく制約"と,(2)形状は急激には変化しない,連続性を保つといった"形状"に基づく制約,の2つが必要であること,両方とも1次割当問題に帰着でき交互に解くことが可能であることが分かった.しかし,両方を同時に解こうとするとNP-hardとなり効率的な解法は存在しない.24年度はこれらの制約を近似計算により同時に解く手法を試行する.これにより移動カメラ画像の頑健なトラッキングが実現できると期待される.また,23年度までに実現してきたFPGAを用いた高速処理ハードウェアを,移動カメラ画像に対応できるように拡張する
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