研究課題/領域番号 |
22500150
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
党 建武 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (80334796)
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研究分担者 |
徳田 功 立命館大学, 理工学部, 准教授 (00261389)
末光 厚夫 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (20422199)
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キーワード | 音声生成 / 聴覚誘導の音声生成関数 / 学習過程 / 調音計測 / 変形聴覚フィードバック / 復唱による学習 / 言語習得 / Quantal Theory |
研究概要 |
人間の音声生成では、発話計画や調音器官の運動制御、聴覚による発話のスクリーニングなど、脳の高次機能から生理物理運動までの過程が関わっている。人間の音声生成機能に関連する、言語音声の獲得や発話障害などの未解明問題が山積しているが、技術的・倫理的な制限のため、実験的な手法により解明することが困難である。そこで、本研究は、生理学的発話機構モデルを基に、発話計画、発話運動制御、視覚・聴覚フィードバックなど脳の高次機構を取り入れ生理学的ニューロン計算モデルを構築し、モデルによるシミュレーションと計測データとの比較により、人間の音声生成過程および発話障害の解明を行っている。 平成23年度は、観測データに基づいて、本グループが開発した生理学的発話機構モデルを用いて幼児の発音学習過程を模擬しながら、筋活動空間(運動指令)から音響空間への投影関係を考察して、モデルの制御法を検討した。また、調音筋に部分的に障害があった場合の代償機能について、モデルを用いて検証を行った。 人間の第二言語習得過程における音声生成と知覚の関係は未知な要因が多く存在している。本研究では、復唱による母音学習過程に着目し、長期間にわたって、被験者の復唱音声と内観を分析することで、学習において利用される音響特徴量や学習過程における知覚カテゴリの変化を考察した。その結果、復唱学習実験における被験者の内観から学習途中には目標母音に対する知覚カテゴリの変化が生じたものと生じなかったものが見られた。これは、人間の知覚および調音空間上には音響的にも調音的にも安定した場所と不安定な場所が存在しており、音響的にも調音的にも安定した場所を探索するように学習が行われている可能性が考えられる。このことは調音目標の形成においてQuantal Theoryにより記述された現象が存在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画は基本的に合理的で、実験はおおむね順調である。生理学的音声生成モデルの制御方法と復唱による学習過程についていくつかの成果を挙げた。それらの成果を3つの学術雑誌論文と9つの学会研究発表にまとめた。平成24年度は、音声生成の生理学的ニューロン計算モデルの構築とモデルによるシミュレーションを中心として研究を展開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を基に、音声生成の生理学的ニューロン計算モデルの構築を行う。多様な条件を設定し、モデルのパラメータを変動させながら、個々構成要素の挙動および全体機能を調べる。モデルシミュレーションについて、音声生成過程の模擬、言語音声獲得過程の模擬および発話障害の模擬を行う予定である。さらに、上記のシミュレーション結果と生理データを比較することによって、人間の音声生成メカニズムについて考察を行う。これにより、言葉の鎖における脳高次機能から末梢器官までの機能的役割を明確化させる。
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