近年の携帯情報端末の高機能化や、統計的手法を背景とした音声認識・音声合成技術の発展に伴い、いくつかの音声対話システムが実用化されている。これらの音声対話システムの開発は、基本的に状態遷移モデルに基づいた機能分割的手法であり、その保守性・機能拡張性に問題がある。また、対話に用いるコンテンツが格納されているバックエンドアプリケーションへのアクセスコードを別途記述する必要があり、プロトタイプの作成には多くの時間を要した. これらの問題に対処するために、本研究ではソフトウェア工学分野で保守性・機能拡張性を高める手法として確立しているオブジェクト指向開発方法論に基づいて音声対話システム開発に適合した対話記述言語を設計することと、その処理系として音声対話システムを稼働させることができるフレームワークの開発を目的とした。 提案フレームワークは,近年のWeb アプリケーション開発で主流のMVC(Model-View-Controller) モデルに基づき,そのコンポーネントをデータモデル定義から自動生成する枠組みである既存Webアプリケーション開発フレームワークGrailsのデータ記述言語を、音声対話システムに適したオブジェクト指向言語へ拡張し、セマンティックWeb の標準オントロジーからクラス定義を継承する機能と、アノテーションによるタスクタイプ分類・主導権制御の機能を付加した。 その結果として,データ定義作業の軽減・Web で公開されている実データの利用・テンプレートの組み合わせによる迅速な音声対話システムのプロトタイプ作成が可能となった。
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