前年度までに、排水性・非排水性のどちらの性状の道路面にも対応可能な路面観測システムの構築を行った。本年度はさらに次の2点に関して研究を進めた。第1点は、路面観測車のイメージングシステムの画像特性の変動への対応である。路面観測車の装備するイメージングシステムは、観測精度を向上させるためにセンサーの感度やセンサーのレイアウトなどの変更を実施する。これにより、観測される路面画像は解像度やコントラストが改善される。しかしながら一方で、輝度値分布も変動し、路面観測システムによる路面要素の検出精度を低下させる要因となる。そこで、従来画像と新しいイメージングシステムによる画像の輝度分布特性を分析し、路面観測システムで最も検出が難しい「クラック」領域の輝度値特性の安定化を図れる輝度値変換方式を導入した。これにより、イメージング特性が変動しても安定した路面要素の抽出が可能となった。第2点は、路面観測システムの汎用化を目指したグラフカット2値化法について研究を進めた。本課題で開発した路面観測システムは、路面画像の画像特性に合わせた閾値など、やや汎用性を欠く。そこで、汎用性を高める方式としてエネルギー極小化原理に基づくグラフカット2値化方式でのクラック領域検出方式を提案した。この方式により、従来方式では安定して検出できない種類のクラックも検出可能となる場合も存在することを確認している。しかしながら、すべてのクラックを安定して検出できるまでには至っておらず今後の研究課題である。
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