平成22年度に行った研究では、抽出すべき画像プリミティブを最も単純ではあるが最も基本的で重要である「直線プリミティブ」に限定し、新しい「直線プリミティブ抽出手法(村上他「画像間演算を用いたHough変換による直線抽出の高速化」、電子情報通信学会技術研究報告、画像工学、IE2010-167、平成23年3月7日)」を開発した。以下に、開発した手法の概要と特徴を述べる。 1)開発手法の概要 (手順1)原画像(2値画像)からn方向シフト画像を作成する。(手順2)原画像と各シフト画像との画像間演算(論理積演算)を行う。(手順3)論理積演算で得られたn枚の画像に対して、n分の1に領域限定したハフ変換を行う。(手順4)ρ-θパラメータ空間上でn個のハフ変換の結果を統合する。(手順5)ρ-θパラメータ空間上で投票数の多いパラメータの値を選択する。(手順6)選択したパラメータ値をもつ直線を画像空間上で描写する。 (手順7)描写した直線と原画像の画素を対比することで、直線線分(直線の始点と終点)を決定する。 2)提案手法の特徴 (1)理論上の処理速度:従来のハフ変換に比べて開発手法の処理速度はn倍程度(処理時間はn分の1程度)となる。 (2)雑音に対する耐性:原画像に含まれる雑音(インパルス性の雑音)は原画像とシフト画像との画像間演算(論理積演算)を行うことでほぼ取り除かれ、安定した直線抽出が可能となる。 (3)投票結果の明瞭化:ρ-θパラメータ空間上での投票結果に関して、重要な直線プリミティブに対する投票結果と重要でない直線プリミティブに対する投票結果との差異が従来のハフ変換に比べて明瞭であり、抽出すべき直線パラメータの選択が容易となる。
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