研究課題
平成23年度は、研究初年度(平成22年度)に開発した「画像間演算とハフ変換を併用した直線抽出手法」について、理論解析および典型画像(ベンチマーク画像)に対する直線抽出実験により、その直線抽出能力の評価を行った。その結果、以下のように、提案手法は従来手法に比べて、直線の抽出速度、抽出精度両面で優れていること、またその一方で、解決しなければならない問題が存在することも明らかとなった。1)提案手法の直線抽出能力(1)処理速度:提案手法でn枚のシフト画像を用いた場合、その直線抽出速度は従来のハフ変換に比べてほぼn倍となることを処理手順の理論解析により示した。また、直線抽出実験の結果から、実際の処理速度は理論解析のほぼ半分となること、nの数が大きくなるとその乖離が徐々に大きくなることが明らかとなった。(2)雑音に対する耐性:原画像に含まれるインパルス性雑音は、提案手法における原画像とシフト画像との画像間演算によりほぼ取り除かれ、安定した直線抽出が可能であることが直線抽出実験の結果から確認された。(3)投票結果の明瞭化:提案手法では、ρ-θパラメータ空間上での投票に関して、抽出すべき重要な直線に対する投票数は維持されたまま、重要でない直線に対する投票数は減少することから、重要な直線パラメータの選択が従来のハフ変換に比べて容易であることが確認された。2)提案手法のもつ問題点今回行った多くの直線抽出実験の結果から、原画像に「太さのある直線」が多く含まれる場合、提案手法の処理速度は理論値より低下する恐れがあること、また1本の「太さのある直線」に対して意味の無い複数の直線候補(投票数の多い直線パラメータ)が出現する恐れがあることが明らかとなった。「太さのある直線」はソーベルフィルタなどの空間フィルタを用いてエッジ抽出を行う際に頻繁に出現することから、この問題に対する対策は実用的な面からも不可欠である。
2: おおむね順調に進展している
画像認識・理解を行う上で欠かせない「画像プリミティブの抽出」を高速・高精度に行うための手法を開発することが本研究の目的であり,研究前半の2年間は,画像プリミティブの中でも最も基本的で重要な直線プリミティブに限定してその抽出手法の開発,抽出能力(速度・精度)の検証を行っているが,先の「研究実績の概要」で述べたように,順調に研究成果が得られていることから自己点検による評価は区分(2)とした。
研究後半の今後2年間は、抽出の対象とする画像プリミティブを、これまでの直線から更に複雑な(決定する図形パラメータの数が多い)円や楕円に拡張することを計画している。ただし、研究前半の2年間で開発した「画像間演算とハフ変換を併用した直線抽出手法」について、先の「研究実績の概要」で述べたような実用上解決すべき幾つかの問題点も明らかとなったため、直線抽出に関する検討も引き続き行う必要がある。なお、円や楕円の抽出手法の開発において検討すべき当面の課題は、開発する高速・高精度の円(楕円)抽出手法が,これまで開発してきた直線抽出手法を拡張することで導くことができるのか、全く別の発想に基づく開発が必要なのかを見極めることである。
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International Journal of Computer Science Issue
巻: 8 ページ: 272-282
Proceedings of the 12th IAPR Conference on Machine Vision Applications
ページ: 406-409
Proceedings of the International Conference on Imaging and Signal Processing in Healthcare and Technology
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Signal, Image and Video Processing
DOI10.1007/s11760-011-0239-3