厚生労働省の統計によれば、平成13年度の我が国の障害者数は約345万人であり、肢体不自由な障害者数は175万人に達している。肢体不自由障害者のなかにはコミュニケーションが困難な方が多く、30万人の視覚障害者以外は視覚機能を用いてコミュニケーションが可能である。また、厚生労働省の統計によれば平成13年度の65歳以上の人口は2千2百万人であり、今後さらに増加するとのことである。本研究は、このような情報弱者が情報技術の恩恵に浴することができるように「利用者がコンピュータ画面に表示したキーボードの所望のキーを見ることにより、キー入力を行う視線によるコンピュータ入力システム」およびその応用システムを提供するものである。平成22年度はロボットアームを視線によって制御し、病臥する障害者が自らの意思で摂食対象物を選択し、口元まで運ぶシステムを開発した。ロボットアームの性能に依存するが、数千円のロボットアームにwebカメラ(130万画素)を取り付けた場合、23秒程度で所望の食べ物を摂食でき、選択位置精度も5mm程度が実現できることが分かった。また、次年度における研究の端緒としてwebカメラを搭載した病院内走行ロボットの障害物回避シミュレーションを実施し、ロボット設計、並びに、一部試作を開始した。さらに、視線入力の基盤システムの高度化研究として視線推定精度の向上、瞬き検出精度の向上、眼球の角膜曲率の自動推定による校正を必要としない視線入力システムの開発を行った。
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