研究概要 |
本研究は,HDTV・パソコン・種々の携帯端末など視聴環境が多様化に伴い,画面アスペクト比(表示ウィンドウの縦横比)や要求される視聴時間(フレーム数)に適した映像符号化処理・映像配信技術を確立することを目的としている.研究計画全体としては,(1)静止画像に対する非線形縮小技術(seam carving)の動画適用特性の把握,(2)動画像の重要領域/注目領域抽出技術の検討,(3)seamの時間連続性保持技術検討,(4)シミュレーションによる特性把握と動画像符号化への適用,の4つのステップで進め,このうち平成22年度には(1)(2)に関連する項目を実施た。 まず,静止画像の非線形リサイズとして知られているSeam carving技術の検証とともに,空間的な画面アスペクトは変化させずに,時間軸方向のフレームを非線形圧縮する手法を検討した.具体的には,seam carvingを動画像に拡張したribbon carvingについての基礎実験を行い,長時間動画映像を扱う際に不可欠となる処理時間の短縮化を実現する手法を提案・評価した.提案手法は,時間軸方向へのcontent-awareな時間軸圧縮手法として「線形フレーム縮小動画像重要画素マップ(key-pixels map)」と「ribbon拡大」を利用して時間軸非線形圧縮を行うものであり,そのシミュレーションプログラムの作成も行った.注目領域マップとしては背景差分を基本とする方式を用いた.実験により,線形縮小率を適度に選ぶことで,重要な動オブジェクトを保持したまま処理時間を1/2以下に短縮できる可能性があることが明らかとなった.今後,フレーム内画面アスペクト変換を組み合わせた動画圧縮処理方式を検討する際に,今年度開発した技術を組み合わせることで,より効率的なアルゴリズム開発を行うことができる。
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