研究概要 |
本研究は,HDTV・パソコン・種々の携帯端末など視聴環境が多様化に伴い,画面アスペクト比(表示ウィンドウの縦横比)や要求される視聴時間(フレーム数)に適した映像符号化処理・映像配信技術を確立することを目的としている.研究計画全体としては,(1)静止画像に対する非線形縮小技術(seamcarving)の動画適用特性の把握,(2)動画像の重要領域/注目領域抽出技術の検討,(3)非線形リサイズ処理アルゴリズムと高速化処理の検討,(4)動画像への拡張とシミュレーションによる特性把握・動画像符号化への適用,の4つのステップで進めている. 今期の検討では特に(3)を重点的に取り組み,静止画像に対する非線形リサイズ技術であるSeamcarvingを動画像時空間ボリュームに拡張したRibbon carvingに基づき,動画注目領域画像の時間線形縮小(フレーム間引き)と,求められたRibbon(Seamの時空間拡張概念)の時空間拡大を新たに導入して,空間アスペクト比を維持したまま,時間方向に高速に非線形縮小(時間軸凝縮)する手法を確立した.本手法では処理後の画質を維持したまま処理時間の65%削減にすることができ,さらに,平成22年度に検証した空間線形縮小(フレームサイズ縮小,処理時間削減率は50%)を用いた高速処理とは独立のアプローチであることから,従来手法との組み合わせでさらに処理速度を向上させることができる可能性がある.また,(4)の動画像の画面アスペクトリサイズ向けの手法として,カメラ静止の場合について,動的トリミング手法を導入した実験プログラムを作成し動作検証した.検討した動的トリミングでは,背景差分法による顕著性領域の抽出・トリミング領域の自動決定・領域の適応的な拡大縮小を組み合わせることで良好な結果を得ている.今後はこれらを発展させ,最終的な目標である動画像の非線形リサイズと,映像符号化への応用についての検討を行っていく.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間方向の非線形リサイズ,時間方向の非線形リサイズともに,顕著性の導入と高速化アルゴリズムによって実用的な応用が可能なレベルになった.アルゴリズムの洗練化と種々の動画像に対するソフトウェア検証に時間を要したため中間段階での対外発表がやや遅れ気味であるが,研究全体としてはおおむね順調であり,最終年には画像符号化への応用と対外発表を積極的に進めたい.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は大きな演算量を必要とする動画像に対する検討が主となる.これに対しては,これまでに本検討中で確立してきた高速化アルゴリズムを効果的に用いることができる.また,H.264/AVCやJPEGといった映像符号化への応用に関しては,これまでに蓄積している処理ソフトウェアがあるため,それらをうまく流用して,本研究で考案したアルゴリズムを組み込むことで検討の加速を図る.
|