前年度までに,動画注目領域を維持しつつ時間方向に高速に非線形縮小する手法,および,カメラ静止という条件の動画像に対して動的トリミングを用いることで高顕著領域を維持する画面アスペクト比リサイズ手法の動作検証を行った.今年度はこれを発展させ,最終目標である動画像の非線形リサイズおよび非線形リサイズの映像符号化への応用の二点について検討した. まず,動画像の非線形リサイズに対しては,カメラ操作が伴う動画像に対してフレームごとにリサイズ処理を行う従来手法では,大きなジャギーが発生し視覚的に極めて大きな妨害となっていた.今回,カメラパラメータや被写体の動きを基にして,時空間動画像から一枚の大きなパノラマ静止画背景を再構成し,この背景画像を基にseam carvingを適用する技術を新たに提案した.前景動オブジェクトは背景スプライト生成時のカメラパラメーとの整合性を取りながら画面合成する.実際の動画像を用いた評価実験により,本手法は極めて自然な動画像非線形リサイズが実現できていることが確認できた. 次に,非線形リサイズ技術の映像符号化への応用に関しては,非線形リサイズされた画像をベースレイヤ,リサイズの際に削除されたseamを拡張レイヤとするスケーラブル符号化を実現した.ベースレイヤを通常のJPEGまたはH.264/AVCで符号化し,拡張レイヤはseamの位置情報を算術符号化で,画素値情報を1次元DPCMで符号化する.今回の検討ではseamの画素値情報だけを符号化伝送し,復号側においてその位置情報を推定する手法を新たに考案した.これにより位置情報の符号化量を削減でき効率的な符号化が可能となった.以上の検討により,様々な画面アスペクト比を有する端末に効率的に画像配信することが可能となり,今後の画像配信システムの設計やサービス普及に大きな役割を果たすと考えられる.
|