研究概要 |
本年度は,手(5指と掌から成る)を対象として,物体を把持しながら姿勢を変化させる手に関して,手の表面と物体間の力場(force field)を実時間で近似推定する方法を提案し,動的把持の力場と物体形状との動的安定関係を見出すことを目的とする。膨大な自由度を持つ手の姿勢制御と手と物体間の力の測定,この二つは共に実現が非常に困難である。 そこで,本年度では,次のように実験環境を整備した。すなわち,データグローブを利用して実際の手姿勢データを取得し,仮想空間内の手モデルを実時間で自在に動かすことを可能とした。この仮想空間内では実際に手を動かすことにより手モデルが物体を把持および操作ができる。このとき,手モデルと物体間の接触面の力場(抗力など)を推定し表示する機能を付加した。このような実験環境を整備した上で,自由に手姿勢と物体姿勢を変化させたときに動的変化する力場の下で,物体が代表点(重心など)で位置安定する動的安定性の実験を行った。 成果として,剛体モデルでの手のモデルを作成し,その自由度の近似性について,実際の手のアーチ構造を,手のモデルでは親指の自由度を増やすことにより,モデル形状をシンプルにしたまま把持・操作の近似動作を実現できることを示した。次に,高速度カメラ観察によるペン回しを分析することにより,動的平衡性を実験的に存在することがわかった。この動的平衡性を論じるのに,適する運動量の検討として,従来のロボットマニピュレーションにおける解析力学を導入した検討がなされ,その結果,従来ほとんど検討されていないactive closureの形態での解析の重要性が確認され,この形態での解析を進めることが決まった。
|