研究概要 |
本年度は,大別して二つの研究を進めた。1番目は,開発したハードボディのディジタルハンド(5指と掌から成る)を用いて,物体を把持しながら姿勢を変化させる手に関して,手の表面と物体間の力場(force field)を実時間で近似推定する方法を用いて,動的把持の力場と物体形状との動的安定関係を見出す。2番目は,ディジタルハンドのソフトボディへの移行するため,ソフトスキンの設計パラメータの選定指針を見出す。 1番目に関して,動的安定性の概念を導入し,この数学的表現の確立を図った。動的安定性の場合,操作する物体形状により,その表現はケースバイケースになるため,特に,物体形状がキュービックの場合とバーの場合の考察を進めた。キュービックの場合,大変複雑になるフォース場の近似表現により,その動的安定性が成立する条件が考察された。バーの場合,回転動作を考えて,その動的安定条件に関する数学的考察およびシミュレーション実験を通した考察が行った。なお,本考察の発展系から,手の形と動作とをある指標に基づき関連させると,動きの美しさを表す要因があるという知見を得ている。 2番目に関して,ソフトハンドを構築するには,ハードボディによる骨格部とソフトボディによるスキン部での構成が必須であることを考察した。この次に,指1本モデルを取り上げ,この指のスキン部を担当する,多数のソフトボディ設計パラメータの選定指針について考察した。本研究では,高速度カメラを用いて,模擬した指(骨格部に木材,その周りに柔軟体を巻いたもの)に金属棒を実際に乗せて回転させ,そのときの柔軟体の変形の様子を見て,それに合うように設計パラメータを調整するという方法を採用した。この方法により,ソフトボディの指と棒との接触面の変形が再現され,かつ,接触面でのフォース場の複雑な変化の様相を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発したディジタルハンドに関して,実時間操作,フォース場の観測,それらの分析は計画通りに進行している。ただし,ソフトボディに関しては,まだ,指モデルの開発に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
ソフトボディとハードボディを融合したディジタルハンドの開発とその実験を推進する。 実験では,主に,ペン回し操作を対象として,動的安定性が成り立つための条件の一般化を図るとともに,この条件にあるような物体形状のデザイン論を新たに提案,検証を行う。
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