研究概要 |
人は歩いているとき,街や通りを景色や雰囲気でとらえ,直感的に自分の移動を理解している.この感性情報処理や状況認識と空間移動理解との関係を客観的かつ定量的に解明することが本研究の目的である.初年度である22年度は,ビデオにより撮影した動画を被験者に見せることによる実験を行った. 当該年度は,被験者が実際にルートを歩行する実験を行った.そして,次の2つの課題についての研究を行った。 【1】実験の習熟度とルートの環境が空間移動理解に及ぼす影響に関する研究 実験ルートが初めての被験者とよく知っている被験者が,それぞれ昼と夜とに分かれてそのルートを歩行する実験を行った.そしてその後,被験者は道案内文と地図を作製した.この実験によるデータを解析した結果,習熟度は地図よりも案内文に大きな影響を与え,その表現を豊かにする事などが分かった.また,環境に関しては,夜の方が距離に関する表現が多くなることなどが分かった. 【2】環境音が空間移動理解に及ぼす影響に関する研究 被験者は初めての実験ルートを歩行した.このとき,被験者の半数は普通に環境音が聞ける状態で歩行し,残りの半数はノイズ音を発するヘッドホンを装着して環境音がやや聞きにくい状態で歩行した.この実験によるデータを解析した結果,環境音の中でも自然音が距離の把握を正確にしていること,環境音がある方が歩行距離を長めに見積もる傾向のあることなどが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,習熟の効果について研究の範囲を発展させた.また,実験法についても,初年度のビデオ観視実験に対し,実環境を歩行する実験を実施した.これらのことにより,本研究は順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である3年目には計画通り,目的地のない自由歩行の問題を扱う.この場合は,これまでと異なり,被験者に所定のタスクを課すという実験法が取りにくく,行動観察の方法論を用いることとなる.このため,この場合も実験方法の検討も含め,新たな課題となる.
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