本研究は、無意味なノイズで会話音声をマスクすることによって、大掛かりな防音工事を必要とせずに現状のままのオープンスペースにおいて、情報漏えいの防止や個人情報の保護といったスピーチプライバシーを確保する、アクティブサウンドマスキングシステムを構築しようとするものである。 個人情報保護に注目が集まってから、従来のスピーチプライバシー評価には存在しなかった設計要求が生じている。「何も聞こえない」、「音声であるとわかる」、「音声の抑揚(リズム)が聞こえる」、「男女の性別がわかる」、「誰が話しているかがわかる」といったより厳しく詳細なレベルの要求となってきている。個人情報保護に着目した場合は、従来の単語明瞭度試験や了解度試験は要求されたレベルに関して表現不能に陥ることから意味を成さなくなり、実際にどのような状態であったかという人間の心理的判断が重要となる。どのような心理評価をどのような言語表現で行えばよいかを明確に規定しコンセンサスを得る必要がある。また、個人情報保護に関わる領域では、従来の物理指標を用いてスピーチプライバシーをコントロールすることは困難であることが示されている。スピーチプライバシーを保護するために最適な物理指標を見出す必要がある。 平成24年度では、アクティブサウンドマスキングシステムの構築と有効性評価を行った。具体的には、前年度までで考察した結果を基に、アクティブサウンドマスキングシステムを設計・試作・構築した。システムの有効性について、心理実験をもとに評価した。
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