建築計画分野の先行研究では着座姿勢を16種類に分類した。それらの着座姿勢に頭部および腕部の状態が異なる着座姿勢サンプルを加え、顔の表情と比較として着座姿勢で表出される感情の構造を探った。また、表出される感情を測定するために、足下、椅子の座面、背もたれに計12個の圧力センサーを装備した、実時間データ無線通信可能な着座姿勢測定装置を開発した。平成22年度は、24姿勢を3名のアクターに表現してもらい、計72着座姿勢サンプル、16感情語、日本人30名の被験者によって心理実験を行った。また、3名のアクターの各着座姿勢の圧力センサー値も同時に記録した。 因子分析を用いて被験者全員の各感情語の平均値を分析した結果、「覚醒度」、「快適度」、「防御度」の3心理要因が抽出された。各心理要因と物理要因の関係を分析した結果、「覚醒度」と身体上部の角度と関係があることが判明し、着座姿勢測定装置の圧力センサーで推定可能であることが分かった。「快適度」、「防御度」は、身体本体より、身体部分としての脚部、腕部、頭部の状態に関係があることが分かり、他のセンサーと組み合わせることによって推定可能であることが示唆された。今後は、着座姿勢測定装置と他のセンサーとを組み合わせることにより、「覚醒度」、「快適度」、「防御度」の3心理要因を推定可能な実時間感情推定システムを構築する。また、椅子は座り心地を考慮していないので座り心地のよい着座姿勢測定装置を開発する。
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